本格的なミニチュアとの遭遇は、たぶん小学生になるかならないかという時に、池袋の西武デパート内にあったリリパッドというミニチュア専門店を見たことでしょう。壁1面に四角い部屋が埋め込まれ、その中にいろんなお部屋がありました。私はその中のベッドルームが大好きで、いつかこういうものを作りたいとずっと思っていました。
そのうち、そのお店もなくなりさみしくなっていたのですが、小学校のたぶん6年生ぐらいでしょうか、両親が村上先生の「ドールハウス作りABC」(じゃこめてい出版。現在絶版。)を買ってきてくれました。そのころの私は受験勉強が忙しく、受験が終わったらね、という約束つきでいつもその本を眺めていました。
そして、中学高校のころ(一貫教育だったので、どっちだったかちょっと記憶に自信がなくて……苦笑)、中野にあるおもちゃ美術館というところで天野ゆかりさん(現在、飯島ゆかりさん)という方が子供向けにドールハウスの教室をやっているのを偶然知って、参加してみました。本当に子供向けの工作、だったのですが、それをきっかけに天野先生とお話したり、シルバニアの家具を使ってディスプレイをしたり、ということをしました。そのころは、工藤和代さんの作品展にもよくいっていました。柏そごうの作品展の時に家族で見にいって、たまたま工藤先生がいらして他にお客様がいなかったので、お話をしました。後で天野先生と工藤先生はお知り合いということもわかって、工藤先生から毎回作品展の案内をいただいたりするようになりました。
そのころは、本も少なく、出ていた本を買っても数冊程度。本屋さんで何回も何回も読み(ひどい客ですね。苦笑)、おこづかいをためてやっと買っていました。「楽しいドールハウス作り」(じゃこめてい出版)や工藤和代さんの本などは、このころに買いました。本を見て作ってみようとも思いましたが、なかなかうまくできず。両親が散歩の途中でピラニアのこぎりとマイターボックス、木材を買ってきてくれたりしたのですが、木でできたものは形にはなりませんでした。(苦笑)工藤さんの「わたしのドールハウスづくり」という本の一番後ろに出ていた「あなたも作ってみましょう」というコーナーの部屋を作ってみた(ただし、ソファと机のみ)のが、はじめてのドールハウス作りかなという感じです。他にも近くにあったDIY用品もおいてある日常雑貨屋さん(今はもうないんですが)でペンキやニスをはじめて買ったのもこのころです。
余談ですが、このころ買ってもらったピラニアのこぎりとマイターボックス、今も現役です。(笑)
「インテリアアクセサリーミニチュア」という題の教室で、3ヶ月で1つのボックスタイプの作品を仕上げる、作品はなるべくリアルに、かつ、部屋に飾れるものにしましょう、というスタンスでした。西前先生は、アメリカでミニチュアを習われていて、それを元にカリキュラムを組んでくださいました。
ボックスや家具の一部をキット(または先生がキット状にしてくださる)をつかいながら、ワンシーンを作っていきます。でも、同じ教材でも人によって全然違うものができてとてもおもしろかったです。先生もペースや飾り方など自由にやりましょう、というスタンスだったので、それぞれの個性が出ていました。
この教室で、Chrisbonなどのプラスチック系キットの存在や使い方、基本的な木の扱い(切る、削るなど)、塗装の基礎、家具の基礎、などなど技術的な基礎と共に、全てをあわせて飾って仕上げることの楽しさを教えてもらいました。今まで、作品という形で仕上げたことがなかった私にとって、初めての経験であり、また、ハマるきっかけになったことでした。私はとくに、このそれぞれをアレンジして集めて飾り付ける、というところが好きなようで、1つ1つは不器用でいまいちと思っても、合わせてみたらけっこういいじゃない、というような感覚がおもしろかったでした。(笑)
生徒さん同士のお互いの得意分野のことや、進め方、作り方、手元、など、お互いに刺激になったりはげましあったり、とても楽しかったです。
しかし、だんだんと学生業が忙しくなり、教室に顔を出せなくなったり、教材が全然進まなかったりして、これ以上やっていない教材をためるだけでも……と思って、3年ほどでやめることにしました。そして、先生自身、その翌年ぐらいに、仕事の関係で教室を閉じられました。
現在、西前先生は、ミニチュア制作を用いたセラピーのお仕事をなさっているそうです。でも、本当に、ミニチュアで自分のいたい心地よい空間を作り出す、という作業は、セラピーにはぴったりなのではないでしょうか。
自分では手を動かさなくて、でもいつかは作りたいなーと漠然と思っていたある日、偶然、ネットサーフィンをしていて久保さん夫妻のやっているページにたどりつきました。今まで、ミニチュアのページを見たことがなかったのですが、その日は、偶然、サーチエンジンで「ドールハウス」という項目でぼーっと調べていて…… そこでドールハウスメーリングリストの存在を知りました。
ちょうど進学試験を控えていた(あんまり細かく書くと年とかばればれになっちゃうなー。苦笑)ある日、入会申し込みをして、自己紹介を送りました。それまで、自分でメーリングリストを運営していたとはいえ、内輪のものばかりだったので、外のメーリングリストに参加するのははじめて。どきどきしていたところに、すぐに自己紹介に対するレスが3通ほど来て、とてもうれしかったのでした。
以来、返事をもらうことのうれしさを覚え、返事を書くことの楽しさを覚え、急速にメーリングリストにハマっていきました。みんなの投稿を読んで、「作りたい」という意識にとても刺激をうけました。また、オフラインミーティング(通称オフ会)をはじめて行おう、という試みに参加して(なぜか幹事でした)会うということに関しては初対面なのに、メールのやりとりをしているので、会ってすぐに打ち解けておしゃべりできる楽しさにまたハマりました。(笑)(今でも展示会などがあるたびにこうしてオフ会を開いたりしています。)
このメーリングリストで知り合いになった友達はたくさんいます。一緒に展示会見たり、買い物したり、制作したり、とっても楽しいです。こんなに仲のいい友達がいっぱいできるとは思ってもみませんでした。すごいです。
話かわって、同じぐらいの時期にニフティの手芸フォーラムにも参加するようになりました。こちらには、メールと違ってアクセスできる回数が少なく、御無沙汰しがちですが、年に一度の作品展がとても楽しみです。
そして、今や、自分でも信じられないぐらい、ミニチュア、にはまってしまったのでした。
そして,のんびりペースで作っていたこのころ.夏の展示即売会に出すという話が持ち上がりました.
#The au Laitのホームページもあります.ここです.
The au Laitは、細く長く活動していましたが、2003年に個展イベント(カフェ&ミニチュアイベント)を開いたり、CDのジャケット用ミニチュアの製作のお仕事をいただいたりと最近ちょっとずつ進展をしています。詳しくはぜひぜひホームページをのぞいてくださいませ。
それから、見ていて「ほっ」とした気分になれるもの、気持ちのいいもの。これは、昔、工藤先生の展示会にいった時に思ったことです。ちょうどその時、私はなぜかとてもいらいらカリカリした気分になっていたのですが、ドールハウスを見て、すーっと気持ちがおさまっていったのです。その時、ミニチュアがもつ力というのを知ったような気がするのです。かわいい、きれいなものだけがドールハウスではない、という話はありますが、でも、それでも、見ていてほんわかあったかな気分になれるものを作り出していきたいというのが、私のスタンスです。(自分の他の作り出すものに関してもそうですが。)
後は、できるだけ考えたい物、それは何かテーマかストーリーがある作品を作ろう、ということ。それは壮大なものではなくて、ささやかなもの、気軽なものでいいと思うのですが、これがあると作品の作り込みのときに、細かいところまで考えるのが楽しくなったりします。(実際、そんなに作り込んだことってまだないんですけどね。苦笑)
私にとってミニチュアって、自分にもそして他の人にも元気をわけてくれる存在だと思っています。作ることで、見ることで、ちょっとでも気分がよくなったら……そんなものを作っていきたいなと思っています。
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最近、だんだんと自分の好みがわかってきたのですが、どうやらエッセイ風ミニチュアといいましょうか、何か伝えたいシーンや、気に入ったシーンを再現したいという風に思うようになってきました。もちろん、まだまだ作品としては作られていませんが。精巧さよりも、むしろ、雰囲気や空気を大切にしたい、シーンとして伝えたい、と考えています。かっちりした写真的なものよりも、さらっとしたスケッチ風水彩画というイメージ。ライフスタイルを提示しているイラストエッセイや写真エッセイなどがありますが、あれのミニチュア版が作れるといいなと考えています。(ま、もともとアバウトなんで、きっちり細やか系は苦手なのですが。苦笑)
これからも、自分が心地よいと思えるようなワンシーンを作り出していければ、と思っています。